カノンカノン(第三版)

彼女の師匠は驚愕する


「……で、結局マジに酒を飲みに来たわけか?」

 思わずそう唸ってしまった俺だが、きっと周りも同じ気持ちだと思う。

 我等が指揮官殿が、割り当てられた天幕以外で食事を摂ろうと言い出す……しかも、酒を出せと命令するなど、明日はきっと魔法が大暴発だ。

 そりゃあ、な?

 知っていたというか、聞いてはいたさ。指揮官殿と全く同じ名前を持つバカ弟子から、色々とな。

 だが、これはいくらなんでも予想外だ。

「酌み交わせるだろうと、言ったからな。元々、奢る約束もあった」

 思わず出た俺のタメ口に無礼だと怒ることもなく、いっそ朗らかに宣ってくれるものだから、今度こそ周りが悲鳴を上げた。

 おいおいおいおい。

 カノンよ、バカ弟子よ。一体全体、どうやってこの堅物を丸め込んだよ!? 今まで、こんなに穏やかな顔を見せたこともなければ、奢るなんて絶対言ってこなかっただろう、このエルフ様は!

 眉間に皺を寄せて、狎れ合いを避けていた筈の指揮官殿は何処へ行った?

「さて、カノン。どれがオススメだ?」

「んー、そうだねぇ。アタイとしては、景気付けに一杯、喉越しの良いエールなんか掻っ込みたいところだけど、アンタにはもっとお上品な酒が合う気がするんだよねぇ」

 おうふ。

 空気が、違う。甘過ぎて、胸がムカムカしてきた。

 本当に、この一日で何が起こった。

 つまりは、アレか。バカ弟子は、堅物を射止めてしまったのか。

 ……マジで?

 バカ弟子は嬉しそうに尻尾を……

 って、おい。

 これは、俺の目の錯覚か? バカ弟子の尻尾、増えてないか。

 これは何としても、コトの顛末を吐かせないといけねーようだな。