絡繰異聞・前日譚

贄人形10『穏やかな日々』


 ふわふわり、今日も意識の欠片はネットを漂い、詩音の行方を捜しています。ご本人の存在はものすごく身近なんですけれど、本体の行方が厳重に隠されているのですよね。

 別の欠片は、研究所周辺の監視カメラを巡回しています。一応、何か異常があると警報が鳴るようにはしているのですが、どうせ今は手が空いているから良いのです。

 天音兄さんほど器用ではありませんが、下手の横好きでアクセサリーや小物を制作して、その写真をひっそりと個人サイトで展示するのが最近の私の趣味です。写真を気に入った詩音が、その個人サイトをご自身に置くと言って聞かなかった所為で、私のサイトは知る人ぞ知る都市伝説のネタになってしまっています。おかげで毎日のようにハッカーが訪れていますが、私と詩音の敵ではありませんね。

 詩音を攻撃しようだなんて、私たちが許すはずがないのです。璃音兄さんは程々にと言いますが、天音兄さんからは盛大に反撃する許可もいただいております。

 さて、今日はどんな作品を作りましょうか。机の上に色とりどりの硝子の欠片を並べていますと、意識の片隅に警告が引っかかりました。

 どうやら、天音兄さんのバグが溜まりすぎて、深刻なエラーになりかけているようです。つい最近もメンテナンスを行ったように思うのですが、たまにはこんなこともあるのでしょう。

 璃音兄さんはほぼメンテナンス要らずなのに、この安定度の差はどうしたら良いのでしょうね。思わず嘆息してしまった私は、悪くないと思うのですよ。

 今日の予定は天音兄さんのメンテナンスに変更して、夜は久しぶりに璃音兄さんにお空の散歩に連れて行ってもらいましょうかね。夜景を見下ろすのは宝石箱を見るみたいで、なかなか癖になるのです。

 まだ自分探しは続いていますが、これだけは言えます。

 嗚呼、この日々の幸せなこと。