絡繰異聞・本編

29『かくて暴かれるのは』風薫の来訪


「関係は大いにありますが、私の能力故に頂いたわけではないのです」

 語る白華の表情は憂いに沈み、視線はどこか遠くを見ているよう。

「もし、私がハッキングが得意ではなかったとしても、きっと同じく、場所は頂いていたでしょう。逆に、ハッキングだけが得意でも、ザイオンサーバーには容易に入り込めないと思います。向こうにも、意思がありますからね。意に沿わぬ事には、ある程度は抵抗されるでしょう」

 不思議な物言いだと、輝夜は思った。白華の語り口調では、まるで。

「ザイオンサーバーとは、知り合いなのか」

「ザイオンサーバーは、絡繰師に注目していますからね」

 ザイオンサーバーの真の姿と、絡繰師との関係。もしも全て明かしたら、輝夜はどう反応するだろうかと白華は想像する。

 荒唐無稽だと一笑に付すだろうか。それとも。

 白華に手を差し伸べたように、助けてはくれないだろうか?

 いずれにせよ、白華の一存だけで話せるような内容でもない。少なくとも本人と、璃音には承諾を得る必要がある。

「あー、すんません。一旦、抜けるっす」

 書記をしていた筈の聖也が、決まり悪そうに割り込んだ。

「どうした、聖也」

「俺にお客さんが来たらしくって、ちょっと相手してこなくちゃなーって」

 輝夜に告げる聖也の片手には、携帯通信端末がある。白華が通信網の掌握を放棄しているため、今は通信も完全に正常化していた。

「お客?」

「風薫ちゃんって言えば解るっすか?」

「ああ、あの子か」

 情報屋の少女のことは、輝夜も知っている。確かに、いくら白華の尋問中とはいえ、おろそかにしても良い相手ではなかった。

「いいぞ、行ってこい」

 上司の許可を得て、そそくさと輝夜の書斎を去る聖也。

 フウカ、と呼ばれる、恐らくは女性。どこかで記憶に引っかかり、白華はそれを検索した。そして、その姿にそっと、息を呑む。だから記憶に引っかかったのだなと、納得もしたが。