絡繰異聞・本編

08『かくて奏音は拒絶する』自爆条件の穴


 場を沈黙が支配した。自爆とはまた、心穏やかならぬ単語が飛び出したものだ。

 意識が強制シャットダウン状態の奏音は、気絶しているようにしか見えない。輝夜はこの少女をどうしたものかと、天を仰ぎたくなった。

「手伝いましょうか」

 真理亜がそう言いつつ、輝夜の腕から奏音を受け取るべく、触れる。しかし、その動きは、直ぐに凍り付くこととなった。

「他者ノ接触ヲ確認シマシタ。警告。自爆ノ条件ガ満タサレテイマス」

「……は?」

 突如として少女から響く無機質なアナウンスは、淡々と非常識な警告を発する。

「自爆ノ条件ガ解除サレテイマセン。自爆マデ、残リ三分ヲオ知ラセシマス」

 周囲がどよめく中、輝夜と真理亜は顔を見合わせた。

「真理亜」

「危険です、社長」

「手を離してみてくれないか」

「ですが」

 輝夜の強い視線に、渋々奏音から手を離す真理亜。

「報告。自爆ノ条件ガ解除サレマシタ。自爆ノ実行ヲ中止シマス」

 ふう、と嘆息し、輝夜は物騒極まりない少女を抱え直した。アナウンスによる警告は、聞こえない。

「『これ以上さわるなら、自爆します』だったな。なるほど、既に触れていた私は例外か」

「社長、まさかとは思いますが……」

「見捨てるわけにもいかないだろう。一旦、屋敷に連れて帰る」

 真理亜の渋面を見た輝夜は、苦笑した。

「ここに置いていってみろ。不用意に触れた誰かが爆発させるとも限らんぞ」

「それは自業自得です。それより、その少女。無事に起きたとして、素直に手当を受けてくれるとでもお思いですか」

「難儀しそうだな」

 それでも奏音を離す様子のない輝夜に、真理亜はやれやれと肩をすくめた。

「どうして社長は一癖も二癖もある者ばかり、拾ってしまわれるのですか」

「助けられるのであれば、助けてあげたくないか?」

 その言葉に込められた闇を知っている真理亜は、今度こそ眉間にしわを寄せた。