絡繰異聞・本編

34『かくて明らかになる』絡繰子の業


 奏音が寝台に寝かされた後、罠から救出された堕天使は輝夜に頭を下げた。

「改めて、奏音が世話になっている。自分は璃音。我々のことは、どう説明したら良いものか。絡繰子のことは、ご存知か?」

「絡繰師のこと? 騒動の仕掛け人、夜空に紛れる暗躍者、存在すら定かではない誰か、の三人組のことか」

 輝夜の答えを、璃音は否定した。

「奏音が作り上げた都市伝説ではない方の、絡繰子。まあ、我々ほど派手に動いている者は他にはいないから、知らなくても無理はない」

「幸崎天音博士の作品群、というのは調べたことがあるわ。人間のように動き、感情を持つ機械人形たちのことではなくて?」

 口を挟んだのは風薫。聖也を脅迫し、璃音を罠に掛けた彼女は、現在逆に真理亜に拘束されている。それでも、面白い話が聞けそうとあれば、首を突っ込まない訳がなかった。

 璃音が続きを促すような仕草をしたので、風薫は記憶をひっくり返す。

「絡繰子はそれぞれにコードネームと得意分野を設定されているのよ。全部で十体ばかり、いたかしら。でも、幸崎博士が謎の死を遂げて、今はもう新規に作られることはないし、既存の作品も行方不明になっているものが多かったはずよ」

「世間的には、概ねそのような認識だろう」

 色々と引っ掛かる言い回しをする璃音に、輝夜が確認する。

「つまりお前たちは、機械人形だというのか」

「今は、そうだな。人間では、このように翼を収納することなどできまい」

 微かな駆動音と共に璃音の背の翼が折りたたまれ、背中から胴体にしまい込まれていくのを横目に、輝夜は更なる質問を重ねる。

「まるで、かつては機械人形ではなかったかのような言い方だな?」

「その通りだ」

 薄らと笑みすら浮かべ、璃音は言う。

「絡繰子は全員、元人間だった者たち。機械になってなお、人間の心を持っている者。だから、奏音に接するときは、一人の人として扱ってもらえると、大変有り難い」