絡繰異聞・本編

22『かくて都市伝説は現れる』真理亜は走った


 真理亜が異変に気付いたのは、窓の外の気配がいつもとは異なるように感じられたからだ。

 異変を嗅ぎつける感覚については真理亜は天賦の才をもっており、それ故に輝夜の専属警護の立場を得るに至っている。

 その第六感が、真理亜に窓の外を確認するよう、促した。

 窓の外を見た真理亜は、普段冷静沈着な彼女らしくもなく、絶句する。そこにはそれだけの、とても非常識な光景が、在った。

「大きな鳥……いや、翼を持った人間!?」

 できれば、前者であって欲しかった。それでも、十分に非常識な大きさになってしまうが。後者は、大きさについては矛盾ないが、存在そのものがおかしすぎる。人間に空を飛ばせたければ、グライダーなどを使うべきであり、よもや羽ばたく翼など意味不明すぎる。

「まさか、こちらに向かってきていませんか?」

 夕闇に紛れて空を舞う影が先程よりも大きくなっていることに気付いて、真理亜の表情が真剣味を帯びる。侵入者に対する警報が鳴らないのは不思議だが、今はそのような些事よりも輝夜の安全の確保だ。

 輝夜の部屋に向かいつつ手持ちの端末から監視カメラの映像にアクセスし、眉をひそめて更に歩く速度を上げる。それだけの理由が、監視カメラの映像にはあった。

 一言で言えば、完全に過ぎたのだ。一見正常で、それでいて真理亜の目から見ても二つ確認できる、異常な点。

 一つは言うまでもなく、空を飛ぶ影が映っていないこと。二つ目は、白華の部屋で、部屋の主が寝台に就寝していること。

 白華が映像の通りに就寝していることはないだろうと、真理亜は確信している。下手をすれば真理亜以上に気配に敏感で、何かあればずっと部屋の椅子に座って寝ない白華が、今夜に限って就寝とは怪しすぎた。