絡繰異聞・本編

06『かくて奏音は拒絶する』恐ろしい妄想


 奏音の本音からすれば、なるべく動きたくはなかった。身体のあちらこちらに負ったダメージは大きく、動かす度にエラーを伝えてくる。

 後から天音と璃音に回収してもらおうと、休眠状態に入ろうとした矢先、人間たちに掘り起こされてしまった。

 休眠状態に入れば、マネキン人形なり死体なりに見えるだろうか。そしてそのまま、どこかに廃棄してくれれば良い。

 そんな奏音の願いも空しく、誰かが両肩を強い力で叩いてくる。揺さぶってこない辺り、正しい医療知識を持っている者の動きだ。直前に、有楽部という不穏な単語も聞こえていたため、奏音は渋々周囲を確認することにした。

 有楽部家に確認を取られては困る。奏音は、有楽部一族からすれば廃棄・処分したはずの、つまりもう存在しないはずの存在だからだ。

 しかし、目を開けたことを、奏音は直ぐに後悔することとなった。まさかの、龍神警備会社の、しかも社長御自らに介抱されていたとは、思いもしなかった。

 いや、ある意味、目を開けて正解だったかも知れない。龍神警備会社は、後始末もきっちりとする、優良な会社だ。目を開けずに身元不明の死体と判断された場合、最悪、埋葬されていた可能性もある。

「大丈夫か!」

 輝夜が奏音に確認する。奏音は輝夜を見上げ、この場合はどう返事すれば無難なのだろうと考え込んだ。

 身体的には、問題だらけで全く大丈夫ではない。状況も、大丈夫とは言えない。けれど、人間用の医療機関に運ばれても、そこでは奏音を治療することはできない。

 それどころか、一般的な人間からすればオーバーテクノロジーになる自分は、実験対象になって分解される可能性も。そこまで考えて、奏音は真っ青になった。

 結論。何が何でも、逃げ出さねばならない。人間に捕まったら、奏音に未来はない。