絡繰異聞・本編

15『かくて輝夜は白華を構う』ハッカーの白華


 そして案の定、騒動は起こった。輝夜の予想を斜め上に行く方向で。

 携帯用の小さいものとはいえ、通信端末を手に入れた白華。輝夜に内緒で通信履歴を監視していた聖也によると、最初に行ったことはショッピングモール半壊事件のニュースの確認だった。その後、電脳掲示板に向かったので、ハンドルネームが判明するかと聖也は期待したのだが。

 通信履歴にエラーが発生して、幾つかの履歴が読めなくなった。

 ピンポイントで狙ったように発生したエラーに聖也が首を傾げたそのとき、彼の本来の業務を管理している画面が一瞬だけノイズを発した。

 常人ならば見逃していたかもしれないほどの、ほんの僅かな間の出来事。しかし、聖也はその道の精鋭だった。

 慌てて輝夜のセキュリティシステムの管理画面を確認し、履歴を追う。重大なエラーログ無し、監視カメラ異常なし、トラップへの侵入者無し、各部屋の電子錠は、

「客間が閉まってるっすね?」

 白華の居る部屋が、施錠されている。これは、異常なことだ。

 通常の手順に従って解錠しようとしていた聖也の手が、止まった。

「コマンドを受け付けない?」

 このときに至って、聖也は気付いた。

「えっ、これ、ハッキングされたってことっすか!?」

 犯人の心当たりは、当然、一人しかいない。白華だ。

「やっぱり厄介の種じゃないっすか、あのお嬢ちゃん!」

 頭を抱えつつも、専属警護の姉、真理亜を通じて輝夜への連絡を行う。

 再度エラーログを、今度は軽微なものまで含めて確認すると、仕様にはない信号を受信した形跡があった。通常は、重大なエラーとして警告音が鳴るはずの案件。しかし、ほぼ同時にエラーそのものが誤魔化されていたため、一瞬のノイズにしかならなかったのだろう。

 強敵の予感に、聖也の背筋がゾクゾクとする。

 騒動の始まりだった。