絡繰異聞・前日譚

創造主06『今後を思う』


 特に自分自身に能力なんて望んだことがなかったし、材料のこともあるし、特にオプションもなくオーソドックスな造りの素体にしようかと考えていたのだけれど、ふと、前提条件が間違っていたことに気付いたのが、さっき。
 この研究所が続く前提だった。それなら、璃音や未来の自分のメンテナンスにもそこまで苦労はしないだろう。精密操作の補助をする機械があちらにもこちらにもある。
 ここ、明け渡さなきゃいけないんじゃん。さすがに、機械一式とか、持って逃げられないじゃん!
 物理的に厳しいというのもあるし、一応現在進行形で研究所には立て込もって徹底抗戦の体を取っているので、逃げたと思わせないようにするためにも持ち出せない。
 本当に組織の言う通りに引き払って投降したとして、待っているのはやはり粛正なのだという予感がある。今までの組織のやり口から考えても結構な割合で待っているのは身の破滅。もしくは、璃音を人質に取られて一生意義をなくした研究をやらされるかだ。
 どちらも、まっぴらごめんである。
 そんな訳で、能力は付けない予定だったけれど、急遽方針転換することにした。精密に金属その他の物質を加工できる能力。今後、璃音や自分のメンテナンスを安定して行うには、恐らく必須の能力だ。
 だって、璃音のたってのお願いだしね?
 僕以外の他人に、身体を弄られたくないって、言ってたもんね?
 もしも逃げ切れたら、先ずは新しい拠点を確保して、璃音にも操作できるメンテナンスの機械を造らなくちゃ。僕のメンテナンスは、璃音に手伝ってもらわないと、無理だろうし。新しい拠点の候補地は、材料を確保することから考えて、璃音が仕事場にしていた違法廃棄場の地下とか、どうだろう。璃音のいた場所という点ではちょっと組織の目に気をつける必要があるけれど、璃音にとって慣れた地というのは大きい。
 研究所内の随所に設置された監視カメラの中に璃音の姿を探す。璃音には、研究所の防衛機構の強化を頼んでいるけれど、そちらが一段落したら僕の素体の組み立てを手伝ってもらおう。