十二ヶ月の彩り

六月【誕生花・ローズ/誕生石・パール】


 僕がこの湖に棲みついて、それなりになる。鱗の輝きから、パールドラゴンなんて呼ばれて追われて、逃げるために人間に化けることを覚えた。抜けた鱗を売って湖の周囲の土地を買い集め、カモフラージュとしてお城のような屋敷も建てた。湖の周囲全て、僕の土地。私有地として、一般の立ち入りは認めていない。誰にも邪魔されず、湖で泳ぐのが、僕の好きなことだ。
 けれど最近は、邪魔が入る。ローズと名乗る、少年だ。名前の響きもそうだけれど、ローズは女性のようにヒラヒラと動きにくそうな服を着て、香水で体臭を誤魔化し、僕の屋敷に来ては門扉の前で座り込む。いつまでも座り込まれると迷惑なので一晩の宿を与え、翌朝にはお帰りいただくのがお決まりのパターンとなりつつある。
「もう来るなと、言わなかったかい?」
「また来ますと、言いましたから」
 今日もローズがやってくる。何重にもレースの重ねられた白ワンピースが、まるでウェディングドレスのようで落ち着かない。人間の世界には、ジューンブライドなる言葉もあると知った。それがますます僕を追い詰める。
「とは言ってもね、ローズ。君が本当はいいところの落とし胤で、命を狙われていたことを知っている。追手の目を欺くために女装していたこともね。けれど今はもう、追手もそれどころではないのだし、いつまでもここに来続ける意味はないんだよ」
 敢えてきつく言ったのに、ローズはこたえた様子もなく笑う。
「意味はあるんですよ、パール。だって、私の名前はローズなんですから」
 彼の髪を飾るのは、真っ赤なバラが左右に一つずつ。そして彼自身の名前もまた、ローズ。人間の風習では、三本のバラの意味は『告白』で……、赤いバラの花言葉は『あなたを愛します』だ。僕も雄なのに、なんてこった。思わず、頭を抱えた。