十二ヶ月の彩り

五月【誕生花・カーネーション/誕生石・エメラルド】


 今日も一日、ご主人様は私を離すことなく、今も私をしっかりと抱きしめて眠っておいでだ。いつからか、少なくとも私に物心というものが宿る程度には、ご主人様は私に深く執着しているらしい。おかげで、ただの人形にすぎなかった私なのに、今や立派な付喪神だ。しかも若輩者のはずなのに、悪霊を祓う程度には力もある。
「んー……、エメラルドぉ……」
 どんな夢を見ていらっしゃるのか、寝言で私の名前を呼ぶご主人様。なぜかとても苦しそうなお顔なのが、気にかかる。ああほら、そんな、眉間に皺を寄せないで。
 慰めてさしあげたくでも、私は人形だから、そんなに動けない。腕を動かせても、私の手は小さすぎて届かない。冷たくて、硬くて、小さくて、だから……。
「人間になれる力が欲しいか? エメラルド」
 ニヤニヤと笑う悪魔の戯言に、惑わされそうになるのだ。
 けれど私はご主人様の人形。ご主人様あってこその付喪神。悪魔は私を人間にして、手持ちの駒に加えたいのだろう。でも、悪魔の駒にされたら、ご主人様は誰が守ってくれるのだろう?
 答えの代わりに、祈りの力を発揮する。悪魔は舌打ちをして、私たちから離れた。
「ちっ! カーネーションは堕とせかけていたのに、この人形め‼︎」
 ご主人様が苦しそうだったのも、どうやらこの悪魔のせいだったらしい。それなら私は、ますます祈ろう。ご主人様の安らかな眠りが妨げられないよう、明日も無事に目覚められるよう。
 ご主人様は私にたっぷりと、愛情と想いとを注いてくれた。私が返せるのもまた、祈りと想いだけだ。
 心なしか、ご主人様に抱きしめられている力が増した気がした。