ドリームワールドオンライン

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「カワイイって育てられたんだなって、あなたを見ていると思うんだよね」
 街中の喫茶店で幸せそうにお菓子をつつきながら、彼女は花綻ぶように笑った。ほめてもらっている最中ではあるが、正直、彼女の方が何倍も可愛らしいと思う。色とりどりのリップやアイライナー、マニキュアの並ぶスクリーンを真剣に覗き込み、色の重ね方を工夫している話を聞くと、本当に頭が上がらない。
 とっても可憐でカワイイものに目がないという彼女には、自分同様、やはりもう二つ三つほどの側面がある。外見だけを見て可憐な少女だと侮っていたら、きっと相手は痛い目を見るに違いない。何故ならば。
 彼女は知る人ぞ知る情報通であり、非常に冷静な分析家、考察家でもある。今の花のような彼女のみを彼女だと信じていると、鋭利な氷の刃に一瞬で魂を冷やす瞬間がやってくるのだ。
 まあ尤も、頭の良い彼女と話すのはとても楽しいことだ。機知に富んだ話、しかも理解度に合わせて説明を加えてくれる相手との話は、本当に心安らぐ。
 勿論、感情優先で話すのも楽しいが、要するに、それは果物も好きだが肉も美味しいという、両立できる好みだと思っている。
 好きは、多ければ多いほど、幸せな気がする。
 などとこうして思考している間にも、実は会話は進んでいる。ヒトは褒められれば褒められただけ伸びるのだという話、その具体例が、今彼女と話している自分のアバターの一つの成長だという話、褒め上手な共通の友人の話……。
 そう、実は今日は、結構気合い入れて可愛くしてみたアバターの一つを纏っている。普段散歩に使っている謎の旅人アレンジのひょろっとした痩身長躯の男性風アバターではなく、女性風のアバターにフリルやレースをあしらった民族衣装風のスカートや上着を纏わせ、装身具選びや化粧にも時間を掛けた。このアバターも最初はもっと素朴な雰囲気だったのだが、褒めてアドバイスをくれる友人たちに恵まれて、本当に結構可愛くなってきたと我ながら思う。その友人たちのことを思うと、身支度にも力が入るというものである。
 結論、カワイイは育てられる。
 こういう遊びができるのも、アバターを複数持てるここならではだなぁと、薬草茶のおかわりに口をつけた。
 微妙にリアル、微妙にサイバーパンク。
 ここは、ドリームワールドオンライン。